先日、在ケアンズ領事事務所・クイーンズランド州警察等が共催(※)の安全セミナーに参加しました。美しい自然で人気のケアンズですが、在住日本人や旅行者を対象とした犯罪被害が昨今散見されています。
日本の性善説は通用せず、バッグの持ち方から家の鍵のかけ方まで、当たり前だったことが通用しません。しかし適切な防犯意識と基本対策で多くのリスクは回避できます。
この記事では、地元警察官やカウンセラーによる講演内容を要約し、ケアンズに訪れる日本人向けに犯罪リスクと対策をお伝えします。
※同セミナーは在ケアンズ領事事務所、クイーンズランド州警察(Queensland Police Service)、Akari Counselling Service、Centacare FNQの共催です。
【ケアンズの治安現状】日本との驚くべき格差
そもそもケアンズの治安は日本と比べてどうなのでしょうか?
クイーンズランド州警察と日本の警察庁による2023年調査では、ケアンズを含むクイーンズランド州の犯罪発生率は日本を大幅に上回っています。※件数はいずれも人口10万人あたり
犯罪の種類 | QLD州 | 日本 | 倍率(QLD ÷ 日本) |
殺人 | 約2件 | 約1件 | 約2倍 |
強盗 | 約58件 | 約1件 | 約53倍 |
暴行・傷害 | 約188件 | 約7件 | 約27倍 |
窃盗 | 約2,676件 | 約389件 | 約7倍 |
詐欺 | 約1,049件 | 約42件 | 約25倍 |
性犯罪 | 約403件 | 約37件 | 約11倍 |
参考:在ブリスベン日本国領事館『安全の手引き クイーンズランド(QLD)州』
特に強盗事件は日本の53倍という衝撃的な数値です。
ちなみに筆者のホームステイ先では、10年前まであまり家の鍵を施錠していなかったそうですが、現在は全ての窓・入り口に二重のロックを設置し、外出時は必ず全て施錠するようになったと言います。近隣で強盗・車上荒らしが相次いだことが理由だそうです。
これらの情勢も踏まえて、ケアンズに10年以上在住する日本人の警察官・カウンセラーさんによる具体的なケースと対策が紹介されたので、その内容を一部シェアします。

ケアンズで昨今頻発する身近な場所での事件

地元の警察官、桂子さんからとくに警鐘されたのは以下の3つ。
- 夜間の女性単独行動は厳禁
- 夜間のケアンズセントラル周辺のリスク
- SNS求人詐欺の横行
夜間の女性単独行動は厳禁
セミナーでは現地警察官から「22時以降は女性1人で出歩かないように」と強調されました。スリや暴行・性暴力といった危険性ゆえに、現地住民でも夜間は1人で行動しないそうです。
筆者はケアンズ郊外にホームステイをしており、19時頃まで自転車に乗ることがありますが、ホストファミリーの感覚ではこれくらいが私1人で出歩けるギリギリの時間帯みたいです。
どうしても夜間に移動したい際は車で送迎してもらうか、複数人でバスに乗るなどの行動が必須です。
夜間のケアンズセントラル周辺のリスク

ワーホリの人たち・観光客の誰もが一度は訪れるケアンズセントラルというショッピングセンター。
セントラル内では以前、夜遅くに女性一人が座っていたところを襲われ、携帯電話やバッグを奪われた事件がありました。ショッピングセンター内であっても安全とは限りません。
またケアンズセントラルの裏、ブンダストリートは夜になると街灯が少なく人通りも減るので通行は避けた方がよいでしょう。
SNS求人詐欺の横行
Facebook・在豪日本人向けサイトなどで見かける求人広告に関する被害報告が警察に5件以上寄せられているそうです。例えば求人に関するやりとりを経てバーでの面接を提案された場合、性被害につながる可能性もあるといいます。
実際に筆者自身も、興味本位で連絡を始めてしまったところ電話番号を教えてしまったら、詐欺の電話が鳴り止まなくなりました。
全てを確認したわけではありませんが、以下の特徴を複数満たす求人は避けたほうが良いと思います。
- 未経験ok
- フレキシブルタイム
- リモートワーク
- 賃金が最低時給よりもやや高い
- 広告に使われている素材やfacebookのアイコンがフリー素材っぽい
このような条件は魅力的に映ると思いますが、常識的に考えれば職を求めている人で溢れかえっているオーストラリアにてこれほど好条件で働けるほぼ環境はないでしょう…。
ケアンズ内で性犯罪の被害は深刻化…

増加する性犯罪
クイーンズランド州では、過去20年間で強姦や未遂の報告が約2.2倍も増加しているとのこと。とくにワーホリなどの一時滞在ビザでオーストラリアで働く女性の半分以上が、職場で性的嫌がらせを経験していることが、ユニオンズNSW(労働組合をまとめる組織)による調査で明らかになっています。
特に注意が必要なのが、シェアハウス、学校、職場、ホームステイなどの「安全だと思いがちな場所」です。
職場の上司やマネージャー、学校や宿泊先の知り合い、ましてやUberの運転手による性的犯罪の被害報告も複数寄せられています。
特にUberについては、夜間の一人利用時は要注意とのこと。利用する際は、住所が特定されないように自宅から離れたところで降ろしてもらい、連絡先も教えないようにしてください。
被害に遭ったら通報・救済措置を
望まない性行為をもし求められたら、Yesと言わないこと、つまり同意をしないことが強調されました。結婚相手であっても同意のない性行為は犯罪とみなされます。
万が一被害に遭ってしまった場合は、000で警察・救急車を呼んでください。
また性被害の場合、true・1800respectといった無料で相談できる支援団体があり、被害によって被った費用を回収できる可能性があります。
ケアンズの交通ルールと高額罰金

筆者はこの2ヶ月間ほど毎日、ケアンズ郊外からシティまで自転車で通勤しています。日本よりも道路交通が危ないと感じたことは特段ないですが、交通ルールがそもそも日本とは異なり、遵守できていないと高額の罰金が発生することがあります。
今回は多くの在豪日本人が知らない重要な交通ルール(2025年7月時点、クイーンズランド州のみ)を抜粋して紹介します。
ヘルメット着用義務

自転車・スクーターのヘルメット着用は法的義務で、着用していない場合は$166の罰金が科せられます。日本では任意なので、うっかり忘れがちですが要注意です。
携帯電話使用で高額罰金

これも驚きでしたが、運転中の携帯電話使用違反は$1,251の高額罰金が科せられます。信号待ち等で一時停止して使用するのも違反対象とのこと。
ただし調べてみると、以下の方法なら合法的に使用できます。
- スマホはハンドルバーに設置可能なホルダーに装着し、視線移動・音声ナビのみで利用
- 手に持って操作したい際は、安全な場所に完全に駐輪・駐車してから使用
日本からの短期旅行者であっても例外ではなく、罰金の通告は日本まで届くそうです。気をつけましょう。
知っておくべきケアンズ内の連絡先と連絡方法
緊急時は【000番】

事件・事故に遭遇し、緊急に救助等を求める必要がある場合は、緊急電話番号「000(トリプルゼロ)」をダイヤルしてください。これは日本の110番や119番に相当し、局番をダイヤルする必要はありません。まずオペレーターに何があったのかを伝えると、事案に応じて警察、消防、救急に転送されます。
日本語通訳サービス
緊急時に英語でのコミュニケーションが困難な場合は、通訳サービスの利用が可能です。通報時に「Japanese interpreter please」と伝えることで日本語通訳サービスを利用できます。
在留届の重要性
外国に3か月以上滞在する日本人は、在外公館に「在留届」を提出することが義務づけられています。在留届が提出されていれば、災害・事故・事件時の安否確認、保護、避難支援が受けられる上、本人と連絡が取れない場合は緊急連絡先につなぐことができます。
それでも誰かに相談したい、すでに何かが起きてしまった、という方は以下から連絡をしてください。
一般相談
困り事があるけれどどこに連絡したらいいかわからない:Centacare FNQ,Multicultural Services

<相談内容>
就職活動や資格取得のサポート、カウンセリング、犯罪や生活に関する相談、多文化交流のイベントなど
<相談方法>
まずはメールにて連絡してください。
日本人のクミコさんという方が、Centacare FNQにて平日勤務しています。直接相談したい場合はメールにて連絡してください。
イベントやミーティングなどですぐに返事ができない可能性がありますのでご了承ください。
<クミコさんの連絡先>
Centacare FNQ / Kumiko Millward
☎︎ 0428920549
✉︎ kumiko.millward@centacarefnq.org
カウンセラーに相談したい:あかまつさよこさん

<相談内容>
ご自身のメンタル・職場・パートナー・子どもに関して
ケアンズの非営利団体とプライベートオフィスでカウンセラーとして勤務し、鬱や不安症などのメンタルヘルス、DV、ジェンダー、セクシュアリティーを専門とされています。
<連絡先>
✉︎ info@akaricounsellingservice.com
☎︎ 0423173879
あかりカウンセリング公式ページ
各種手続き及びトラブル発生時に相談したい:在ケアンズ領事事務所
<相談内容>
- パスポートの発給、各種証明書の発行(日本の運転免許証に関する英文証明書)、戸籍の届出、在外選挙人証の取得、マイナンバーカードの申請/交付など
- 事件・事故などトラブル発生時の支援及び解決方法の提案
<連絡先>
☎︎ 0740515177
✉︎ jcairns@bb.mofa.go.jp
ケアンズ領事事務所公式ページ
リスクを最小化する行動を
最後に、セミナーで警鐘された行動指針をまとめておきます。
<基本的な予防策>
- 夜間(特に22時以降)の単独行動を避ける
- やたらと条件の良いSNS上の求人情報には注意
- 望まない性被害には同意しない
- クイーンズランドの交通ルールを厳守する
- 緊急連絡先を把握しておく
せっかくのオーストラリア滞在、できるだけリスクを減らして思い切り楽しみましょうね。
次回のセミナーも予定されているので、また講演内容をまとめます。
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